さきちゃんたちの夜 Jan.4


今日から学校がスタートだったのですが、何日も続いた喉の痛みを苦しめていた菌が本気を出し、熱に変わったので学校お休みしました。

体調が悪い時って朝すごく悪いけどお昼くらいちょっと元気になって、夜また悪くなるってパターン多くないですか?
わたしはよくあります(笑)
そんなちょっと元気な昼下がりに吉本ばななの「さきちゃんたちの夜」読了しました。

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完全にジャケ買いです(笑)
480円で買えるのに、7.6ドルで売ってるって高いですね!!
これ読んだのは二度目です。小説は一度読んだら二度と同じものは読まない
んですが(単に飽きっぽい)これは値段がそこそこしたのでね、、笑


こちらにある紀伊国屋に置いてあったのでなんとなく手にとって最初ぱらっと読んだらあれ?面白そう!と思い迷わず購入。



なんであれ?って思ったかというとですね、わたしは中学時代に一度吉本ばななで一番有名であろう「キッチン」を図書館で読んで挫折したんです。
退屈だな、って思ったんです。
今思うとその退屈さはほんとつまらない!っていうのじゃなくて、フランス映画を見ているみたいな感じです(好きな人ごめんなさい)
おしゃれっぽくて台詞もカットもいいんだけど、ダラダラしている
って感じでした。







結果的にすごーく面白かったです。
この作品は短編集で、タイトルはラストの話のタイトルです。
この短編集は全て、さきという女性の名前の主人公というだけでみんな繋がりもないし漢字も違います。

多分なぜこのようにしたかというと、「さき」というありふれた人たちの話という強調なんだと思います。
みんな見た目も特に特徴がないです(笑)
中肉中背であったり、特に明記がないけどとにかく自分はどこにでもいる普通の人だと思い、しかもそうである暮らしをしています。
そんなさきたちがちょっとした奇跡?を起こしたり起こさなかったりする話です。笑






吉本ばななはそんなわけで苦手だったのですが読むとまあなんて面白いのでしょうか

まず、5作中4作は会話文から始まります。

「久しぶりに連絡をして、その上にこれじゃあ、そりゃあ、嫌な質問だと思うけど、高崎の部屋の鍵なんて、もう持ってない?早紀ちゃん。」 

「わたしは、あの人、そんなにもひどい感じがしなかったから、ちょっと様子を見に行きましょうか。ほうっておいていいものかどうかわからないなら。だれもあっちに行ってないのなら。」

「咲ちゃん、あんたは作れないの?あんなにそばにいたのに。散歩してても淋しくてものたりなくなってしょうがないよ。」

「あんたなんか死ねばいい。」



最後は!?とさせられますが、どれもぐっと惹きつけられませんか。
主人公と、多分内容では第三者である会話に出てくるだれかを予想させますよね
だれのこと??どんなはなし?なんのこと??って。
そこがまずうまいなーと思いました。

出だしがうまい文を作れる人はほんとすごい人なんだと思います。
勿論、作り込んだ描写を始めに書き出す作品も好きですがさあヨムカ〜てところから読み出して、本の世界にのめり込むまでが瞬間的であればあるほど、ぐいぐい読み進められてしまうからです。 


太宰治もそこがすごくうまかったと言われていますよね。斜陽の最初のシーン、大好きです。


ただ本の出だしで一番好きなのはわたしの小説の不動のトップ、フィッツジェラルドグレート・ギャツビーです。
二番目はあとロバート・A・ハイラインの夏の扉

やっぱり出だしって肝心ですね。










吉本ばななの世界観は一言で言うとしみる~~って感じです。
真冬にうわー寒かったーってあったかい我が家に帰り、我が家のお風呂に浸かった時の体がじんじんする感じに似てます(笑)

鋭い観察力で人を見、描写をしながら結局は暖かく、肯定的に表現する人だなと思いました。
まだ一作目なんですけど。もっと読んだらいろいろ変わるのかな。







わたしがしみる~~ってなった文を勝手に公表します。

「なにかいつのまにか賭けて没頭することができるのは、なによりすばらしいことだ。でも、そのことで体を壊したり、疲れてしまったり、自分の人生がなくなってきまったり、不安になるようだったら、それは間違っているし長くは続かない。」

「へたにうまく立ち回らずに、ひとりになると決めたならなる、人生があまり残っていないわかっていたから、思い切ってほんとうにそうしてみる、そんなおばさんの気持ちが私には少しわかる気がしたし、そんなひどいことには思えなかった。家族や親戚に囲まれているなら意にそわない場所で死ぬのであっても幸せだとなんとなく思いこまされているけれど、そしてもし自分に家族ができたら私は家族の近くで死にたいけれど、ひとり身ならそういう死に方がしたくない人も中にはいるのではないだろうか。」

「彼が花瓶のぬめりまできれいに洗っているのを見て、心を洗われる思いだった。清潔さに神経質な感じではなく、まるで陶芸家が土をいじるような自然な感じだったからだ。」

「泣くと人間は子供に戻るんだ、と私は思った。『小さい鈴木くん』がどういうふうに泣いていたのか、子供慣れしている私にははっきりと見えた。」
これとかすごいよくないですかー!泣いてる姿も愛おしく思える描写ですよね!


これは鋭いなってところ

「気持ちが重いのは閉塞感があるからだ。気持ちを保つのがいちばんむつかしい。一歩前に出ると『あと少しお金を出したら、もう少しいい思いができる』話題でいっぱいだからだ。一度気づくと都会ではどこへ行ってもそれだということがわかる。
それがこの切り詰めた生活がずっと続くのではないかという思い気持ちをいっそう強くする。」
質素倹約でもいい、死ぬわけではないし満たされていると思いたい反面の不幸ですよね。

「一個でも楽しいことを増やしておけば、逃げ場を増やしておけば、たいていのことがかわせると思うから。」
ここがこの短編集の全てだと思いました。

過ぎた青春に想いを馳せるのも、もうこの世にいない誰かを想うのも、逃げる場所作るのもいいじゃん?生きてくためにはさァーって言ってる気がします。







あともう一ついいなと思ったところが会話のリズムと二人の関係性がわかるところです。
このあたりとか

「お義母さん、セーターの穴、私直しておこうか?」
例えば母が言う。
「編み物とくいだねえ。」
祖母が答える。
「てきとうにやってるからね。」
母は笑う。
「このあいだみたいに、パッチワークみたいなカラフルな感じにしてよ。」
祖母が笑う。
「ヒッピーみたいになっちゃうけどいい?」
母が答える。
「そこがいいんだよ。若い人と住んでる新鮮さがあって。」

小説だけじゃなくて脚本かけばいいのにって思いました。笑
なんとなく、是枝監督の「歩いても歩いても」っぽい作品になりそう。







こんな感じで私にとっては名言オンパレード、ちょっと心が疲れ気味だったのでおーよしよしって言ってもらえた気分でした。笑

奇想天外な結末にはならないけど、まあそれがさきちゃんの日常、さきちゃんたちの夜!